「アートで生きる」「広い世界へ」共感する二人の華やかなおもてなし空間
八千代台駅東口から徒歩2分ほど、通りから奥まった落ち着いた場所に「いこいの店 喫茶Rio」があります。好評なのがサイフォンで淹れる美味しい珈琲とモーニングセットや日替りランチ。オーナーの浅井万亀子さんの「食事が美味しいカフェでありたい」という想いが反映されています。浅井さんのお人柄が愛されて地元の方がたくさん集まり、人がつながる場所でもあります。 また、亡くなったお父様は著名な画家である浅井昭さん。店内には以前からアートが飾られていました。
そんな喫茶Rioさんとペアになったのはアート書道家の矢野華風さん。文字をベースにイメージを膨らませ、書だけでなくカラフルな絵も加えたモダンで華やかな作品を制作。ロゴデザインや映画のタイトル文字、イベントでの大筆を使ったパフォーマンス、アート書道教室など船橋市や八千代市を中心に多方面で活動しています。
お互いに「ビビッときていた」「予感がしていたので安心できました」となるべくしてペアになった二人。どんな物語が生まれたのでしょうか。
社交的に見えて実は人見知りなんです!そんなところも似ている二人
-お二人とも毎日のようにFacebookを更新して、お友達もたくさんいらっしゃる、とても社交的なところが共通点に思えます。コミュニケーション能力が高いですよね。
矢野
いえ、ほんとは一人で家にこもっているのが好きです。Facebookは仕事で出かけた報告ばかりですよ。飲みに行く時間があったら作品を作ったり勉強したりしていたい。書道のパフォーマンスもできるようになるまで何年もかかりました。いまだに緊張して震えているし、汗だくでやっています。
-そう見せないのがプロですね。すごく堂々として見えますよ! 浅井さんはいつも気配り上手で、周りにたくさん人がいますよね。
浅井
私はすごい人見知りなの。私のテーマはコミュニケーション能力を身に付けることなんです。なぜ向いてない仕事をやるの?って思っています。初めてのお客さんなんて特に緊張しちゃって。人が来ないと商売として成り立たないのにね。
-(取材チーム一同で)全然そう見えませんよ!?そもそもなぜ喫茶店を始めたんですか?
浅井
学生の頃からカフェバーをやりたかったんです。ところが途中で音楽の仕事をしたり、ずっと違うことをやっていました。仲間でライブができるような、と考えていたのですが、全然イメージ通りの店になってない(笑)。まあ、現実的にはいろいろなことをやって来た全部が積み重なって今があります。畑違いのことを次々にやってきて、今また違うことをやろうとしています。一回しかない人生だし、回り道でもやりたいことは絶対にやろうと思うんです。
浅井さんのお父様は著名な画家、浅井昭さん。八千代市在住で市民会館前の平和祈念碑の作者でもあり「八千代市芸術文化協会」の会長を務められ、市の芸術文化振興に多大な貢献をされました。2016年に他界されましたが、2017年にはオーエンス八千代市民ギャラリーで「浅井昭 追悼作品展」が行われました。この対談の時点では店内には浅井昭さんの作品が飾られています。
矢野
浅井さんのお父様の作品、素敵です。今でも古くないし、斬新ですよね。しかも絵だけでなく彫刻やいろんなジャンルで素晴らしい作品を残した方ですよね。
浅井
半世紀前くらいに作った作品もあります。常に、何年何十年経っても新鮮であるものを作っていくと言っていました。本人はあまり語らない、アピールもしない、おもてにも出ない、だけど作品は語っていますよね。見た人が何かを感じたり、ものを作る仕事をしている人が何かインスピレーションを得られたり。見方はそれぞれですが、そういうものを感じてもらえたら十分です。
お客様の思いを大切に。イメージを膨らませてアート書道に表現
-華風さんはアート書道に進まれるきっかけはなんでしたか?
矢野
きっかけは子供の頃の習い事です。ピアノや水泳などみんな何か一度はやりますよね。それがたまたま書道でした。おとなしい子どもで、黙々と書くのが好きだったんです。3歳の頃から、兄について行っていました。それから、もともと学校で習う絵は好きでした。書道だと白い半紙に墨の色だけ、展示会前には何時間も同じ篆書を書いて…正直飽きちゃうんですよ(笑)
15年くらい前にアート書道を教えている先生にお会いできました。絵と字がミックスされて色も入っていて、斬新で。うわーこれだ!と思って10年間くらい習いました。やって行くうちに2~3年前からロゴなどのお仕事が来るようになってきました。
アート書道では字の中に絵的要素を入れていきます。鶴だったら「鳥」の部分に鶴のイメージできるような絵を入れて仕上げます。もともと古典の文字は象形文字と言われるように、ものの形が元になっていることも多いのでやりやすかったですね。字の中に形を見つけて表現する、今のスタイルになりました。
-難しそうに見えるのですがコツはありますか?
この間もバレエスクールからの依頼で「舞」という字を作成しました。バレリーナが踊っているようなピュッて足を伸ばしたイメージでデザインさせていただきました。書道は仮名や楷書、行書など一通りやったんですけど、自分の中にあるものを全部ミックスさせて元の字のラインをデザインしていきます。
自分の中でイメージを膨らませることが大切なので、面談してよくお話を伺いますね。お店だったらどういうコンセプトで作られているかを聞き、わからなかったら行かせてもらいます。バレー教室だったら見学させてもらったり、喫茶Rioさんだったら料理を食べさせてもらったり。山形県の新庄祭りのロゴを書かせてもらった時には、実際山形に行って屋台行列を全部見て体感させてもらいました。必ず、相手の思いを受けて、それを大事にして表現するようにしています。
浅井
そこで感じた感性を忘れないようにして、そのままキャンバスに描いていくんですね。
地域の方に自分の家のようにくつろいでいただけるおもてなしを
-お客様の思いを大事にするということでは共通点などありますか?
浅井
最初にここを始める時のコンセプト、企業理念というのがあって。単語にすると「おせち」です。
「お」はお客様の思いの先を汲み取っておもてなしをする
「せ」は、セカンドリビングとして快適に過ごしていただく
「ち」は、地域密着型、地域貢献。地域と融合して行くということ
自分のこだわりとして味や食材選びなどもあるんですが、お客様が求めるおいしいとか居心地がいいとか、それを実現していきたいです。
例えばお料理で出す源右衛門鍋。本来は具材が冬の素材、特に里芋など季節によって入手が難しくて、でも夏でも食べたいというお客様がいればそういうのに答えていきたい。それは頑張るではなくて当たり前のこと。最近は特に、手を抜かない、自分のできる最大限のことをすることを考えています。フレンチやイタリアンのシェフではないけれど、自分で自信を持って出せるもの、冷やし中華だったりノンメタポークのお料理だったりコーヒーだったり。ここでなければというものを提供できるのが個人の喫茶店の良さではないかな。個々のお店に特徴や個性があると思うんです。だから面白い、いろんなところに行きたいと思うでしょ。
浅井
こうしたお店は地域の人に愛されなければ成り立たないです。都会にある、人の密集した地域の路面店で、流れるように人が歩いてふっと入って、というところではないので。お家のような感覚で「帰って来たよ」「おかえり」「行ってらっしゃい」と。セカンドリビングのように使ってもらえている気がするんですね。むしゃくしゃしたり疲れたりした時にはここで吐き出して次へ進んでもらえたらいいなと。
今、「八千代台まちづくりプロジェクト」という八千代台の街を活性化していこうというプロジェクトがあって、そこにもどんどん貢献できたらいいなと考えています。物理的にできること、ボランティアでできることは限られているけれど、お店を繁盛させて利益を上げることも貢献の形。儲けるだけではなく地域の方に喜んでいただいて初めて還元できるのかなと考えています。
華風さん作品でいっぱいの店内。彩り鮮やかな秋の御膳も渾身の一品
-お二人の出会いは?
もともと活動場所は船橋なのですが、人を通して八千代の「さわ田茶屋」さんのイベントに呼んでいただき、パフォーマンスで書かせていただきました。その時にいいカフェがあるということで喫茶Rioさんを紹介されました。あったその日に「よかったら作品を飾ってみますか?」って声をかけていただき、あ、じゃあってトントン拍子に。その後すぐにART x CAFEの話があり、まちゼミも、ということで。何かとご縁ができたんです。こちらの繋がりでいくつかお仕事もいただきました。
初めて会った時からビビッて来ました。何か感覚が一緒だったんでしょうか。最初からずっと変わらずこんな感じで、話しやすくてホッとできます。まだ知り合って半年、会った回数も3~4回。でも何時間も喋っているので中身は濃いですね。志が素敵なので、話していても楽しいです。無理なことは言われないしアートのこともわかってらっしゃるので、アドバイスもいただけて本当に助かります。
-企画会議の内容はどんな感じですか?
浅井
今ある作品は外して、全部華風さんの作品で埋め尽くそうとしています。大きい作品とあとケースに入るハガキ大くらいのを飾っていただいて販売します。キャンバスに描いた作品を店頭にも置いてもらって。その一カ月が華風さん一色、華やかな空気につつまれると思いますよ!お料理も限定のメニューを考えています。
矢野
お店の雰囲気に合わせて和洋折衷的な作品を作ろうと思います。ワークショップみたいな体験してもらえるものもやりたいですね。ハガキくらいのサイズで好きな文字を書いて、持ち帰って飾ってもらえるものを。書道というと苦手意識がある方もいるのですが、アート書道では文字の中にデザイン的なものも入れるので、実際やってみると小さいお子様でも楽しめます。ちょっと練習したら素敵な作品ができた、というのを体験してほしいです。
浅井
普段のお教室もされているので、その出張版をやってもらえるのかなと楽しみにしています。
対談時に計画していたことはイベント期間に実現。生まれた限定メニューは、色とりどりの秋の食材がカゴに詰められた実に華やかな「秋の彩り籠御膳」。華風さんの色鮮やかなアート書道にぴったりのメニューです。イベント期間中も大人気で、1日限定10食がいつも早い時間に完売してしまうようです。
10/24に店で行われたワークショップは満席になり、参加された方にはとても好評でした。喫茶店の常連の方々や初めての方など一緒に和気あいあいとした雰囲気で楽しくできたようです。
アートで生きる道、飲食店経営、どちらも強い意思と覚悟を持って
-こちらの二人はアートで生きていくということについても感覚が似ていると思います。
矢野
難しいですよね。アートで生きていくというのは。自分の商品価値をつけるのも。
自分自身も進化し続けないと退化する一方だし自己満足だけの世界になってしまう。書道だけでなくていろいろなものを吸収し続けないといけないと思います。水墨画や現代アートの先生について習っていますが、それにもお金がかかります。
浅井
作品にふさわしい価値を主張し続けるのも絶対必要なことですね。最初は趣味の領域で、買ってもらえただけでもいいですけど、それでは続かない。値段があってないようなものだし、買い手もいくらと言われないとわからない。ステージはしっかり上げておいたほうがいい、実際のレベルとして価値をこっちが主張する、それなりの場所で作品展をやったりコンクールで受賞していくことが値段をつけやすくしますね。
身近で父を見てきましたから。絶対値段を下げちゃいけないところは下げない、また、どんなに積まれても売らない、ということもありました。作家はとりあえずお金になればいいと思って制作している人は少ない、自分のイメージがあってこういう人に飾って欲しいと考えていると思います。企業の儲けになるからとか、名前を使いたいとか、そういった、意に反することがあると思えば売らなかった。
-何かを成し遂げたいと思ったら、AをやるためにBを捨てなきゃという選択が迫られる場面がありませんか?
浅井
いや、難しいけれど両方が必要では。人生で選択する時期がきて、どちらかしか選べないというメッセージを受けたとき、本当にできる人はどっちもできていると思います。
父は最初の頃、売れない作家で大学も出ていない。本当に生活はたいへんでした。作家は続けたい、作品を世に出したい、でも続けたいだけで奥さんに食べさせてもらっていていいのかと言ったらそれは違うから、印刷会社で働いて、それ以外の時間で制作活動をしていました。絵で食べていけないうちは他で稼ぎながら、自分を成長させ作品を成長させる。コンクールや作品展に出しながら結果として世に出すためにはお金も必要ということで、だから働かなきゃ、だから寝ないで制作する、それで結果を出してきました。
矢野
お父様の場合はやらざるを得なかった、だからこそ生まれた作品なのかもしれませんね。
AとBが何かはわからないんですが、女性として今まで自分がやってきた中で、例えば結婚や子供、生活の手段としてのお店経営など、書道を続けて、ある程度のレベルを超えるためには、選択しなくてはいけないタイミングがありました。無理した結果病気になり両親の後を継いだお好み焼き店を閉めざるを得ないとか、自分の意思ではどうにもならない大きい転機もあって。この先進んでいく、って覚悟をするためには、人と同じことを求めちゃいけないのかなと考えたりもしました。
浅井
確かに全部はAとBにはっきり分けられなくても、どんな職業の人でも最低限、やりたいことのためにも経済的に自立しているというのは必要だと思います。父は、正直子どもにとってはどうだったか、という部分はあります。究める人間というのはそれだけやっぱりちょっと偏っていますね。本人は常識的な人間だと思っていてもね。
-お父様から影響を受けていると思いますか?
浅井
あるとしたら、人がどうでも気にせず、開拓精神みたいなものを持って、やろうと思ったことを貫いていくことかな。父の家系はみんな独立心が強く、たぶんそういうものを受け継いでいる私は、違う業種でも何でも結果を絶対出そうと考えています。ただ単にお金で動く人ではなかった、でも矛盾しているけれどお金は必要なんだよと、そこを両立させてきた人です。学校を出ていなくても結果を出してきたというのが自信やプライドにつながっていた。私も、飲食店であっても自分の信念、自分のポリシーを曲げたらいけないと考えています。
-最後に意気込みを聞かせてください。
矢野
今日いろいろな話ができて心構えも変わりました。志としては、今回は八千代から千葉県へ、そして世界へ発信できるように。この展示もまずその一歩として志高く作品制作したいと思いました。
浅井
一カ月間の展示作品がある間、本当に矢野華風一色と当初から決めていたので、それにふさわしい限定メニューで喜んでいただきたいです。当然いろいろなメディアなどで情報を得た新たなお客様の足が向いてほしいという思いで発信します。お店のグレードも上げていきたいし、それには他の通常営業でも価値を高めていけたらと考えているところです。
-ありがとうございました。今回の企画をきっかけに、自分にないものを手に入れ、お互いに成長していける、素晴らしいカップルだと思います。仲の良いお二人の意気込みがうまくかみ合った、華やかなおもてなしの空間になっています。ぜひ実際に足を運んで、お楽しみください。
スペシャルメニュー
秋の彩り籠御膳
「秋の彩り籠御膳」 華風さんのイメージと季節感をご堪能ください。営業時間内いつでも可。 一日10食限定(ご予約優先)

ワークショップ
「~飾れる~文字をデザインしよう♪」
10/24(水)11〜12時/14〜15時
